NO IMAGE

タッチさせる木

この夏に

やりたいことがあって、

 

それは娘を、木にタッチさせる、

というものであったのだけれども

 

連日、猛暑、猛暑、台風、ボクシング連名、

という感じで、

 

そんな中、

日中外に連れていくのが

憚られ、

 

しかしながら、

盆休み、仕事もないし、

やることもないし、

 

朝早く起きて、

妻と娘を連れ出して

 

近くの市民公園に連れて行った。

 

僕は公園フリークなので

色んなとこに行ってるのだけれども

 

この公園には妻と、娘を初めて連れて行った。

 

妻は結婚をする際、隣の県から

移住してきた民族なので

初めて行くところには興味があるらしく

楽しそうであるが、

 

先日イオンで買ったばかりの新品帽子を

妻はお披露目できるわ、

そんな女性らしい感情も混じっているようだ。

 

(娘の帽子は、妻の支持にてメルカリで中古で買わされました)

 

 

公園は一周、約一.五キロメートルで

すれ違う人とは、朝なのに「こんにちは」

と挨拶した。

 

気温はそれほど高くないが

久しぶりに歩いたからか、

運動不足からか、汗をかいた。

 

でも、嫌な感じじゃないね。

 

なんて、妻と話しながら歩き

タッチさせやすそうな木を見つけた。

 

 

娘は最近、

手や指の神経が発育してるらしく

 

僕が顔を近づけると

アゴを、ガシッと握るようになった。

 

アゴを、強く握られると

顔を固定された感じで

なぜだか動けなくなる。

 

そんな娘に僕のアゴもいいが、

アゴだけでなく

自然のものを触らせたい。

 

木にタッチさせたいのは

そんな理由からだった。

 

 

つるっとした表面の木だった。

 

ベビーカーから娘を

抱っこして、木の前に行き

 

「さわってご覧」と僕。

 

 

娘は、木を凝視している。

 

木を見たことはないのだから

どうしていいのかわからないのだろう。

 

 

「近すぎる」と妻。

 

「え?」

 

「娘と木が近すぎる、近すぎて見えてない」

 

 

僕は木にタッチさせたいがために

娘の顔前まで木に近づけていたようだ。

 

抱きかかえている腕をやや引き、

木から少しだけ離した。

 

すると、娘、

今度は手を上げだした。

 

僕はいいぞ、と思った。

 

「触りそう触りそう、可愛い」と妻。

 

僕は娘がどんな表情なのか

超絶見たくなって、顔を覗いた。

 

次の瞬間だった。

 

娘は僕のアゴをガシッとした。

 

 

妻が叫んだ。

 

「それは、木じゃない!」