この世の<換える>事の中で、おむつ替えほど、楽しませるものはない。
大概の<換える>事というのは、面倒くさいものだ。
例えば、トイレットペーパー替え、電球替え、シャープペンシルの芯替えと、地味ではあるが気持ちしんどいものである。
しかし、おむつ替えには楽しませる要素がふんだんに盛り込まれているのである。
おむつ(紙おむつ)は、へそ下からお尻まで、黄色いラインが入っている。
最初デザインかと思っていたが、このイエローラインはおしっこに反応し、色が青に変わるのでおしっこが出たかがわるようになっている。
私は事あるごとに、このラインの色をチェックする。
そろそろ、かな。と思い見てみると、ブルーに変色している。
この予感的中♡は、私にちょっとした優越感を与える。
そして、おむつをオープンザドアし、娘の両足を持ちあげ
お尻が丸見えになるのだけれども、この時にサッとおむつを抜き、
下にあらかじめ敷いておいた新しいおむつに交換する。
この手際をクイックにできるかを、常に問われている。
おむつ替え時の状況は様々だ。
赤ちゃんが寝ている時もあれば、大声で泣いているときもある。
急に寝返りをすることもある。
さらに、交換途中での放尿されることもあるので、ある種、
時限爆弾をしかけられていて、カチカチカチと秒針の音が聞こえるようである。
放尿されてしまうと、布団や赤ちゃんの着ている服まで濡れてしまうので、
さらに状況は悪化してしまう。
たとえ、そのような放尿場面でチョロチョロと手に生ぬるいものを感じたとしても「あったかいんだからぁ」とは言ってられない。
冷静に判断し、この場を乗り切らないとならないのである。
この交換時の同時放尿は、ロシアンルーレットのようなもので、
「最近はおむつ替え時に放尿しなくなって偉いねぇ」なんて言っていると
見事におしっこで撃ち抜かれる。
特におむつ替えが一通りできるようになったお父さんが、やられてしまうことが多い。
これをイクメン業界では<勝って おむつの 緒を締めよ>と言われている。
そして、何よりも楽しみなのは、大便のおむつ交換である。
たいがい、人の便をまじまじと見るのは、しみけんさんぐらいなので
普通の人は目をそむけてしまいがちであるが、
赤ちゃんの便はとても神秘的な色をしているのである。
そして、まだ柔らかく、絵具のようで、ある意味見方によっては芸術である。
しかし、ここでひとつ問題がある。
というもの、お父さんは、大便交換の回に当たりづらいのである。
平日は仕事で家にいる時間が短いので、どうしても妻に取られてしまう。
どう頑張っても、帰宅後に赤ちゃんがタイミング良くしてくれないと当たらない。
帰宅して、妻に「大便はまだだよね?」と聞くと、
「ちょうどさっきしたばかり」と言われる。
「く、くそぉ」と、世のお父さんは口を揃えて言う。
だから、休日には、おむつの事が気になって仕様がない。
来い!来い!と二六時中、待ち構えている。
そのお父さんの勇み足は、おむつチェックの回数にあらわれて、
何度も何度もしつこいくらいチェックしてしまうのである。
その時だった。
赤ちゃんが、いきみだしたのだ。
えっ、来たか!? 来るのか!? 来ないのか!?
あぁ、でもちょっと待っててぇ、お父さんもぉトイレしたくなっちゃったからぁ
先に行ってくるからねぇ、待ってよちょぉっとぉ、慌てないで娘さんばぁ
と、郷ひろみの声で言って、トイレに行き、ややあって戻ってみると、
すでに妻が、交換しているのであった。
「く、くそぉ」
妻にシット。