妻の話によると、娘は
外ではおとなしいらしく
家では娘、
「アプゥ、アポう!」と言って
空中を足で激しく蹴って
その足を床に落とすという、
カカト落としをやっているのだが
妻と骨盤矯正や、市の施設、病院などでは
じっと天井を見つめて「プ」しか言わなくなるらしい。
それを聞いて僕は、似てる、と思った。
似てるのは僕にだが、
というのも、
妻は外でもどこでもうるさいのであって
以前初めて一緒に映画を見に行ったときには、
こんなうるさい人いるのかと思って驚いた。
ズートピアという映画だった。
妻は、そこ笑うとこか、というシーンでひとり大爆笑したり、どこにも息をのむシーンないのに「ハッ!」とか言うので僕のほうが驚かされるし、時折、豪快に鼻をすする音がして横を見やると号泣していて、でもまあこれ反応だからしょうがない、と思っていたら今度は、
「可愛い」「可哀想」「うける」「可愛い」「可哀想」「うける」を連発して、妻の前に座った人の方が可哀想であった。
僕は映画よりも妻が気になってしまい、
どっちがズートピアかわからなくなってしまったのである。
ひるがえって僕は、外ではとても静かな男である。
「外で静かなとこは俺に似たと思う」と妻に言うと、
「そうかもしれないけど」と妻
「けど?」
「まだわからないよ、ふふふ」
と妻は静かに笑った。