娘の平日、日中どんな事をしているのか、どんな出来事があったのかを、知りたい。
って、それを知るには私の場合、妻からの話が全てであります。
私は、仕事から帰ってくると「今日はどうだった?」と妻に聞くんです。
そうすると、毎日、何かしらあるんですね。
「ビートたけしの肩をクぃっクぃってやるあつあるでしょう。あれを娘がやりだして不安」だとか。
そんな話を聞きながら、娘の今日という日がどんなんだったかを想像するんです。
先日、気になる話がありました。
それは近所に住んでいる、子どもさんの事です。そのご家族とは仲良くさせてもらっているのですが、子どもさんがいるんですね。
お姉ちゃんと弟。
で、弟くんの方。
小学生低学年なのですが、うちの娘を見つけると、寄ってきてくれて、変顔をしてくれるらしいんです。
これに、娘が爆笑するらしいですね。
で、娘が爆笑してると、弟くんも調子乗ってくるらしいんです。
それ、わかりますよね。弟くんも変顔見せてくれるってことは、笑って欲しいんです。で、娘爆笑する。
それがもう凄いことに、外すことなく爆笑させるらしいですね。息がぴったりなんだそうです。
妻の話を聞いてみると、その弟くんの変顔と、うちの娘の爆笑というコンビが形成されたのは一ヵ月くらい前かららしいんですね。
で、会うたびに、必ず変顔をしてくれるらしいんです。で、必ず、うちの娘も爆笑するらしいんです。
「鉄板だわ」と妻は言っておりました。
そこで。
私は良いことを聞いたぞ、と思ったんです。
少し前から娘は、私の方を一瞬だけ見て、妻の方に行ってしまって甘えたり、妻がいなくなると泣いたりしだした。
ことあるごとに私は娘に
「だいじょうぶですよ」とか「お母さんはすぐお戻りになりますよ」などの声掛けをいたしておりました。
あるいは、娘の危険地帯からの進行方向の変更。
荒らしたおもちゃやおむつを片付け、テレビ子供番組への斡旋など、アシスタント業務が主だったんです。
そこへきて、この情報。
<変顔で娘爆笑!(鉄板)>
花形。爆笑、花形。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
休みの日。
娘と二人きりになった私はさっそく、やってやろうと思っていました。
変顔ってやつを。鉄板の変顔を。
私はこう見えても、変顔ってのには自信があったんです。
と言いますのも、みんなで写真撮ったりするじゃないですか、どっか行ったり、集まったりしたりするとね。
で、そんなときにみんなが笑顔で写ってる中、私だけ半目になっていたり、へんな口になっていたりすることが多くて、できあがった写真見てよく笑われたんです。
まぁ大学生の頃とかの話ですから昔ですがね。
だから、無意識で変顔になってるんですから意識的に変顔なんてしたらすごいぞと自信があったわけです。
で娘が、おもちゃで遊んでいるところ狙いましてね。
こう、横に顔を接近させて、娘の名前を呼んだんです。
そうしたら娘、こちらを見ました。
ここで、変顔!
目を見開いて上の方見て、鼻を左右大きさ変えて広げて、富永一郎の漫画みたいな口をしたんです。
そうしたら、どうなるかと思っていたら、
娘、まったく反応しないです。
富永一郎の漫画の口で笑わないやついるのかと思いました。
でも、まあ娘も<お笑い漫画道場>知らないわけですからね。
そうか、そうかと。
気を取り直して、もう一回、変顔してみた。
今度は、目を思いっきり閉じて、舌を出してみた。
結構王道なやつでせめてみた。
どうなるかと思っていたら、
娘、これも反応がないんです。
娘はぷーさんのおもちゃを持って遊んでいた。
ぷーさんの顔なんておもしろくもなんともないじゃないですか。ねえ。
そこで、向きを真正面からにしてやってみた。
今度は顔のパーツを全部中央に寄せて、え?うそ、顔のパーツって移動するの?というのをテーマにした変顔です。
で、これもダメだった。
「諦めたら」
驚いて、振り返ったら妻がいたんですね。
そして妻は、娘の名前を呼ぶと、パカッ、っと口を鳴らして妻が変顔をしだした。
ぜんぜん、変な顔じゃないし、なんだそれ!
そう思ったとき、娘が急に大きな声で笑い出したんです。
「ふんゲッ!ふんゲッ!」
今まで聞いたことのない種類の笑い声です。
ふんゲッ、ってなんなんだこれ。
このときの、勝ち誇った妻の顔。
私は一生忘れやしません。
追伸:この日以来、私は変顔の研究をしております。